江東区 大島 亀戸 小児科 アレルギー科 予防接種 乳幼児健診

診療内容4種混合ワクチン自主回収ロット接種者への対応について(当院見解)

  掲題に示す4種混合ワクチンへの対応について、問い合わせが増えてきましたので、当院の見解をお示しします。メーカーから抗体検査や抗体陰性者のワクチン接種の無料実施の機会が提供されましたが、結論から述べますと、抗体検査を積極的に行う必要はないと考えています。以下にその理由を詳しく述べます。

① 本件の経過

本年6月より4種混合ワクチン「テトラビック」の特定ロット(4K23および4K24 それぞれA,B,Cのサブロット区分あり)で、ポリオの抗原量が規格を下回っていたため、自主回収されました。その後8月よりメーカーから、当該ロットでのワクチン接種者に対して、希望者には抗体検査と、抗体陰性者への追加接種を無料で行う旨の対応が取られるということが公表されました。これは、ワクチンの有効性に不安を感じる方へのメーカー側の対応として実施されます。但し、あくまでも希望者への対応であり、現時点でこの検査について、国や保健所が積極的に勧奨しているものではない模様です。

② 当該ロットワクチンの有効性について

自主回収に至ったロットはポリオの抗原量(規格60~135単位略)が、4K23は56.3、4K24は52.0であり、規格下限の60を下回っていました(但し、ポリオ以外の百日咳、ジフテリア、破傷風については規格内で問題はありません)。一方で、これら2つのロットよりもさらに低い抗原量50の製剤を接種した場合の免疫獲得の結果データがあり、抗体陽性率、陽転率ともに100%であり、十分な免疫が獲得されていることが示されていました。従って、当該ロットを接種された場合でも、免疫獲得に影響ないものと考えられ、このためか国は本件に関する特別な動きは取っていません。

③ 当該ロットワクチンの安全性について  

当該ロットのワクチンの安全性に影響があったとする報告はありません。また、薬理学的にも、抗原量が少ない方向へ規格を外れていることから、副反応などは、より少なく発生する可能性はあっても、より多く発生する可能性は考えにくいと思われます。

④ ポリオの発生・流行状況について

問題となるのはポリオについてですが、現在日本では、ポリオの流行はありません。野生型のポリオの発生は1980年の1例を最後にわが国では全く発生しておらず、世界的にもポリオは根絶方向にあります。日本国内で生活している限り、ポリオに感染するリスクはほとんどないと考えられます(しかし、ポリオ流行国へ移住や渡航される方は、今回の4種混合ワクチンのロット問題とは関係なく、渡航感染症専門の医療機関に相談頂くことをお勧めします)。

⑤ より大切なこと

日本のポリオのワクチンは定期接種にて4種混合ワクチンで計4回不活化ワクチンを接種しますが、日本と同様のポリオ非流行国では不活化ワクチンを計5回接種するのが世界標準とみなされます。つまり、現在の日本の定期接種では、世界標準より1回少ない接種状況です。そのため、日本小児科学会やVPDの会などでは、4歳を過ぎた時期にポリオの不活化ワクチンを任意接種として(自費になりますが)1回追加することを推奨しています。これを欠かさず実施することの方が、今回のロット云々の件よりも大切であると考えます。

なお、本件とは関係ありませんが、日本では百日咳の接種回数も世界標準より少ないため、⓵小学校入学前の時期に3種混合ワクチンの接種をすること、⓶11-12歳の定期接種の2種混合ワクチンを任意接種の3種混合ワクチンに変えて接種すること、の2つの接種を任意接種として、実施することが推奨されます。  

以上をまとめますと、②より当該ロット接種の場合でも、ほぼ100%免疫が獲得されていると見込まれること、③より安全性の問題がないと考えられること、④より日本ではポリオに感染するリスクがほとんどないことなどより、当院では、抗体の検査をあえてする必要はないと考えています。繰り返しになりますが、おそらく国も同様の判断で積極的な勧奨をしていないのではないかと思われます。  

メーカー側は無料で抗体検査の機会を提供していますが、抗体検査をしても、ほとんどの方が抗体陽性との結果が得られると見込まれるため、乳幼児にとって多少なりとも侵襲的である血液検査等は必要最小限であるべきとの立場から、当院では必要なものとは考えていません。「無料だからとりあえずやっておこう」というような安易な判断は避けたいものです。

文責 法人代表 齋藤 勇