今季のインフルエンザワクチンの接種時期について、厚労省より下記のような協力要請が出ております。内容を要約すると、①65歳以上の高齢者の定期接種の方は10月1日~10月26日までに接種し、②①以外の65歳未満の方は10月26日まで待って、これ以降に接種をするという協力の要請です。当院は小児科クリニックですが、①については、65歳以上の高齢者の定期接種にも対応しておりますので、ご希望の方は10月1日より接種できますので、ご予約の上、ご利用下さい。一方②につきましても、65歳未満の方に一律10月26日まで接種を待って頂く必要は無いと考えております。これについては次節をご覧ください。

季節性インフルエンザワクチン接種時期ご協力のお願い(厚労省)

 ②の65歳未満の方に10月26日以降まで接種を遅らせるよう求めていることに関しては、まず、該当する方が容易に受け入れるのは難しいのではないかと思っています。

 当院では、インフルエンザワクチン接種を積極的に行っており、接種数も地域で最大規模のクリニックとなっています。それでも毎年11月以降にワクチンの供給不足により1-2カ月程度、予約も接種も中断せざるを得ない状況になっております。ワクチンの確保には最大限努力していますが、このような状況が毎年続いていることを考えると、10月26日以降まで接種を待って、その後、確実に接種ができるかというと、不安が残ります。政府が希望者全員にワクチンの確保を保証しているという訳でもないため、例年のようにワクチンの中断期間が発生し、その間にインフルエンザが流行してしまう・・・というリスクについても考えておく必要があると思います。

 本年のインフルエンザワクチンの供給量は昨シーズンより7%増で過去最大とはいえ6300万人分(※)と発表されています。日本の総人口は約1億2500万人で、そのうち接種の適応の無い6カ月未満の児の数は、ほんの一部ですので、無視して計算するとほぼ2人に1人が1回のみ接種できるくらいの供給量だということになります。これで、希望者全員に必要な回数だけ接種ができるかというと疑問も残ります。

 この政府の協力の要請に応えて接種を遅らせるかどうかは、個々人の判断だと思いますが、当院がクリニックとして、この要請に従うことを強く求めることは、リスクの可能性を考えるとやや憚られるというのが正直なところです。この要請に従うことで皆様を接種できないリスクにさらすことになることは、当院の本意ではないため、当院はこの要請に従うことを積極的に求めることまではしない立場をとりたいと考えます。

 なお、以下はワクチンで子どもを守ることに積極的な「NPO法人 VPDを知って、子どもを守ろうの会」の記事です。季節性インフルエンザワクチンについて、妊婦への接種が強く推奨されることや、高齢者、小児、慢性疾患患者、医療従事者などの接種の順位に優先をつけないことが国際標準であること、小児への接種は10月末までに完了することが強く推奨される点などが示されています。参考にして下さい。

今シーズンの小児のインフルエンザワクチン接種に対するVPDの会の考え方

※「6300万人分」としか発表されていないため、どのような集計での数字かがわかりませんが、製品数が6300個ということであれば、実際はこの人数より多く接種ができる場合があります。

文責 法人理事長 齋藤勇