ワクチン接種は最終的にはその個人の判断で行うもので、強制されるものではないという大前提の基に、以下のようなことを考えたいと思います。
 ワクチンは接種した本人を感染症の発症や重症化、死亡から守る意義があり、これは接種した本人を守る個人免疫といいます。一方、感染症にかかると感染源となって、他の人に病気を拡げてしまうため、個人免疫には周囲に感染症を拡げない効果があり、個人免疫をもった人が増えることで、その社会の中では感染症にかかる可能性が低くなります。これを集団免疫といいます。このように接種者本人のみならず、ワクチン接種は周囲の人のためでもあります集団免疫は個人免疫の集まりによる相互効果ですが、ほぼすべての人が個人免疫をもつことによって、流行を抑えられるばかりか、病原体が根絶されることで、個人免疫がない人でも感染する機会が無くなり、守られるということもあります。このように「ワクチン接種は自分のためばかりではなく、世の中のため、人のため」と解釈できます。そして「自分は感染しても大丈夫」とか、「予防接種は気が進まない」というように考える人も、家族や友人など自分の大切な人を守るためという考えに立つと、ワクチン接種に前向きになれるのではないでしょうか。自分が無症状のため感染症に気づかず、大切な人や周囲の人々に感染を拡げてしまうということは避けたいものです。したがって、当院並びに当法人では、できるだけ多くの方に、できるだけ早くワクチンの接種をお勧めしたいと考えています。
 過去に地球規模でのワクチン接種によって根絶されたものに「天然痘」があります。また、わが国では1960年ころまで流行を繰り返していたポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)に対して日本政府は当時のソビエト連邦から生ワクチンを緊急輸入し一斉に予防接種したことにより、急速に流行を終息させたということがあり、歴史的英断として評価されています。そして、わが国では1980年の患者を最後に、野生株によるポリオの患者は発生していません。
 もちろん、ワクチン接種はゼロリスクではありません。しかし、新型コロナウィルスの流行のため、感染して重症化したり、大切な人が亡くなったりするのみならず、感染していない人でも産業や日常の生活の活動がひどく制限されている現状を1日でも早く終わらせるためという視点で考えても、期待される利点・効果はリスクに比較して十分大きいと思われます。
                                    文責 院長・法人代表 齋藤 勇