新型コロナウィルスの感染が日々拡大しています。しかし、現状日本では(中国武漢や、イタリア、イランのような)感染爆発による医療崩壊には至っておらず、社会インフラや産業も比較的保たれています。感染者数については過少評価されているとみられますが、死亡者数が報道のように低くコントロールされているのであれば、現在の政府等の対応は評価できると思われます。何よりも重要なことは、真に医療提供が必要な重症患者に適切なレベルの医療が提供されることであり、また、リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人を感染から守ることといえます。安倍首相が「子供たちを新型コロナウィルスから守るために」全国の学校を休校にする要請をしましたが、むしろ「子供たちが感染源となってリスクの高い人に感染が及ぶことを避けるため」ということがより重要であり、この意味で、休校措置は一定の評価ができると思われます。

 現状では個人個人が冷静に感染防御(感染しない、させない)することが重要で、標準予防策(マスク、手洗い)に加えて体調管理(栄養と休養)に注意して生活したいものです。政府は人の集まる催しの自粛をさらに10日間程度延長することを要請しましたが、この時期(3月19日頃)までに新たな感染者の数が減少したり、増加傾向が収束することは考えにくく、残念ながら新たな感染者数は増えていくこととなり、そうなると重症者数や死亡者数もしばらくの間は増えていくことになります。それでも重要なことは、医療崩壊を避けて、適性な医療へのアクセス環境を維持することです。現在取り組んでいることは、流行のピークを遠ざけることによって、ピークの程度を低く抑えようとしている訳であり、収束というのはもっと先になります。ピークを先延ばしし、低く抑えることによって、医療崩壊を避けながら治療薬やワクチンの開発を待てることも重要なことです。

 経済活動については、自粛により多大な影響が出ているところでもあり、いつまでこの状態が続くのか、出口が見えない不安を多くの人が持っていることと思います。今後もしばらくの間、感染者数が増えていくことは間違いないと思われますが、クラスター分析による感染経路が追えない状態になり、検査されていない不顕性感染の人や軽症感染者、潜伏期にある人の数が街中に増えていると判断される状態になると、市中感染の様相が強くなります。そうなると診断がついている感染者だけを隔離しても、他に多くの隔離されていない感染源が市中に多く存在する状態となり隔離の重要性が相対的に低くなってきます。その段階で、経済活動や社会インフラの維持の重要性が、隔離・自粛の効果を上回るとの判断に至った段階なら、たとえ感染者数が増えていても、これら隔離や自粛の扱いを緩められることになるでしょう。さらに次の段階として、既感染で回復した人の人口における割合が増えていくと、これらの人々が、未感染者を感染源から守る免疫の壁となり、新規の感染者数が抑えられることになり、流行がピークアウトに向かうことになります。流行の収束にはこの他に、季節変化に伴うこのウィルスの振る舞いがどうかも重要です。冬場にこれだけの猛威を振るったウィルスですから、願わくば、夏場はおとなしいものであってほしいと思いますが・・・。しかし、可能性はあっても、これについては今後の状況を注視していくしかないのが現状です。

文責 院長 齋藤 勇